木造といえば戸建、RC造といえばマンションというイメージを持っている人も多いと思います。もちろん間違ったイメージではありません。
それでは木造でもRC造でもない”S造(鉄骨造)”は何に使われる構造でしょう?
S造は戸建、マンションだけでなく、倉庫、工場、体育館といった大空間建築物まで幅広く使われています。今回はこのS造(鉄骨造)についてお伝えします。
目次
S造(鉄骨造)とは
S造は別名で鉄骨造とも呼ばれます。SはSteel(鉄)を略した言葉で、建物の骨格を鉄骨で作る構造のことを指し、一般的には2つの分類があります。
- 軽量鉄骨造:厚さ6ミリ未満の鉄骨を鋼材としたもの
- 重量鉄骨造:厚さ6ミリ以上の鉄骨を鋼材としたもの
また、国税庁は固定資産税などの算出のためにS造を上記とは別の3つの分類で耐用年数を設定しています。
- 3mm未満:19年
- 3~4mm:27年
- 4mm以上:34年
資産評価を主目的とした耐用年数ですので、もちろんこの耐用年数以上に建物の寿命を延ばすことは十分に可能です。
通常、鉄骨造と言うと重量鉄骨造のことを指します。ですがこの記事では鉄骨造の種類別に特徴をお伝えするために、軽量鉄骨造(厚さ6mm未満)と重量鉄骨造(厚さ6mm以上)とそれぞれ区別した名称で解説していきます。
S造の建築工法
軽量鉄骨は、柱や梁をボルト接合で固定する「鉄骨軸組工法(ブレース工法)」が用いられます。鉄骨軸組工法は木造の軸組工法(在来工法)と同様の工法で、柱や梁が鉄骨で構成されています。
X型に組まれた筋交いをプレースといい、「ブレース工法」とも呼ばれます。
重量鉄骨は、柱や梁を溶接により接合し枠を一体化する「鉄骨ラーメン構造」が主に用いられます。ラーメン構造は設計自由度も優れており、高層ビルにも用いられる工法です。
軽量鉄骨造のメリットとデメリット
<メリット>
品質が安定している
木造住宅の場合は、木の種類や質によって住宅の質にバラツキが生じてしまいますが、鉄骨住宅に使われる部材は、工場生産によって安定供給する仕組みが整えられており、住宅の質も安定しています。
シロアリの害が無い
また、基本構造が金属で構成されているため、構造そのもので部材が腐ることやシロアリの害が無い点は安心です。
<デメリット>
間取りが制限される
ブレースの位置によって間取りの自由が制限されますので、その点でいえば、鉄骨ラーメン構造に分があるといえます。
建築コストが高い
比較的小さい建物に使われる軽量鉄骨、比較対象はやはり木造になります。木造住宅と比較してしまうと坪単価が高く、建築コストがかかってしまいます。重量鉄骨やRCよりはコストを抑えることができるので、木造を避けたい人にとっては一番安い建て方ではあります。
断熱性が低い
鉄は熱を伝えやすいという特徴があるため、夏は外の暑さが伝わりやすく、冬は寒さが伝わりやすくなってしまいます。また、それが結露の原因となり、内部の鉄骨のサビにも繋がる可能性があるため注意が必要です。
重量鉄骨造のメリットとデメリット
<メリット>
品質が安定している、シロアリの害が無い
は軽量鉄骨造と同様です。それに加えて、次のメリットがあります。
広くて大きな空間を作れる
重量鉄骨造で用いられる鉄骨ラーメン構造の住宅は、柱と柱の間を大きく開けることができるため、広々とした空間を作りたい場合に向いています。軸組工法も設計の自由度は高いですが、耐震性を高めるために壁を一定量作らなければならなかったり、窓のサイズに制約があったりする場合があります。
耐震性が高い
鉄骨住宅は、素材の鉄や鋼がしなることで地震のエネルギーを吸収する構造になっており、耐震性に優れています。また、鉄骨は素材そのもののが折れにくいものなので、倒壊の危険性はかなり低くなります。木材のように材質によって強度が大きく変わることがないため、鉄骨住宅は安定した高い耐震性があると言えるでしょう。
<デメリット>
断熱性が低い
は軽量鉄骨造と同様です。それに加えて、次のデメリットがあります。
建築コストが高い
軽量鉄骨造よりさらに建築コストが高くなります。建物全体が重くなるため、基礎や地盤の工事も高額になる場合もあります。用途や規模に応じて鉄骨の大きさを決めていく必要があります。
終わりに
S造(鉄骨造)の耐用年数は長く、メンテナンス次第では非常に長い期間の利用が可能です。そのため、古くなった内装をリノベーションで住みやすく作り変えることで利用の幅が広がります。
特にラーメン構造では広い空間を保つことが可能で、自由な間取りが作りやすい住宅になります。
S造の新築住宅は大手のハウスメーカーで建てるのが一般的で高価格になりますが、中古のS造であれば注文住宅で購入するよりもずっと安価に購入することが可能です。耐用年数の長さを活かして中古を買ってリノベーションすることで、ワンランク上の生活空間を作ることも出来ることでしょう。
これからマイホームを検討する方においては、ぜひ推薦したい建物です。