「離婚でペアローンの家を手放す 任意売却か通常売却か、その分かれ目」 埼玉県川口市 区分マンション ペアローン・離婚 売却方針事例

家族の合意形成・共有名義

この記事で分かること

共有者や親族の意向が異なるときの確認事項と話し合いの順序を整理します。 本文では前提・選択肢・確認順序を、断定せずに分けて説明します。

「売れば返せるはずなんですけど、手数料を引いたら足りるのか、足りないのか、自分たちでは分からなくて」

離婚の話し合いはほとんど済んでいる。あとは、二人で買ったマンションをどうするか。それだけが残っている。けれど、その「それだけ」が、いちばん動かしにくい。

住宅ローンが、まだ重く残っているからです。

今回取り上げるのは、埼玉県川口市に区分マンションを持つ、川上健太さん(夫)と川上美咲さん(妻)のケースです。

離婚に伴い、ペアローンの残る分譲マンションをどう売却するか悩む夫婦のイメージ(埼玉県川口市・区分マンション事例)

二人で買った家に、ローンだけが残っている

お二人がこのマンションを買ったのは2022年。価格はおよそ3,980万円。共働きで、夫婦それぞれが住宅ローンを組む「ペアローン」を利用していました。

ペアローンでは、それぞれが別の住宅ローン債務を負います。連帯保証、持分、団体信用生命保険等の扱いは契約で異なるため、二本の契約書と残高証明を分けて確認します。結婚しているあいだは自然な形でも、離婚を前にすると、この「つながり」が重くのしかかります。

取得からまだ4年。返済はそれほど進んでいません。残っているローンは、二本合わせておよそ3,680万円。これが、今回の話のすべての起点になります。

残債と「売れる値段」が、ほぼ同じ高さに並んでいる

このケースでは、残債と売却後の手取りを比べる手順を示すため、売却見込額を3,700万〜4,000万円、中心を3,880万円と置きます。実際の売却価格は、同じ資料を渡した複数査定と販売反応で確認します。

住宅ローン残債と想定売却価格がほぼ同じ高さで釣り合う天秤のイメージ

ここで、最初の一文に戻ります。「足りるのか、足りないのか分からない」。これは感覚の話ではなく、数字がほんとうに拮抗しているのです。

仮に3,880万円で売れたとして、仲介手数料などでおよそ145万円が引かれます。手元に残るのは約3,735万円。残債3,680万円を、わずかに上回る程度です。

  • 3,950万円で売れた場合 … 手取り 約3,800万円(残債を約120万円上回る)
  • 3,800万円で売れた場合 … 手取り 約3,655万円(ほぼ均衡)
  • 3,600万円で売れた場合 … 手取り 約3,460万円(約220万円の持ち出し)

同じ家でも、売り方ひとつで、手元にお金が残るか、逆に持ち出しになるかが変わる。売り急いで値を下げれば足が出て、落ち着いて売れれば少し残る。その境目に、お二人は立っていました。

売却見込額は比較上の条件です。残債は各金融機関の残高証明、売却条件は複数査定、抵当権抹消の可否は各金融機関で確認してください。

それぞれの「早く終わらせたい」が、少しずつ違う

健太さん(夫)は、とにかく早く区切りをつけたい。ローンが残っているかぎり、次の生活設計に進めないと感じています。

美咲さん(妻)は、急ぐ気持ちは同じでも、「公平に分けられること」をいちばん大事にしたい。投げ売りで持ち出しが出れば、その負担をどう分けるのかという話にもなります。

もうひとつ、お二人に共通していたのは「近所や職場には知られたくない」という気持ちでした。売り出し方を考えるうえで、これは小さくない制約です。

通常売却・任意売却・住み続けるの3つの分かれ道を示す道標のイメージ

3つの方向性に整理する

状況を、3つの方向性に分けました。どれが正解ということはありません。何を優先するかで、合う答えが変わります。

方向性① 夫婦合意による通常売却(限定告知・価格重視) 想定3〜6ヶ月

お二人の同意のもと、同じ規模の成約価格を根拠に、残債と諸費用を上回る価格で、なるべく近隣に出回らない範囲を意識して売り出す。時間を多少かけてでも、手取りを残債の上に乗せにいく方法です。

方向性② 任意売却(手取りが残債を割る場合の備え) 想定3〜8ヶ月

手取りが残債に届かない場合に、金融機関と抵当権抹消条件を協議して売却する方法です。返済状況、残債務、契約、信用情報への影響は案件ごとに異なるため、売却前に各金融機関へ確認します。あくまで①で届かなかったときの「安全弁」と考えます。

方向性③ 一方が住み続ける(単独引受・借り換え) 想定1〜3ヶ月

どちらかが住み続けたい事情(生活基盤など)がある場合、その人が単独名義に借り換えて引き継ぐ道です。売らずに清算できますが、単独でローン審査が通ること、相手の連帯保証を外せることが条件になります。

このお二人の「残債をクリアして公平に分けたい」「近所に知られたくない」という優先順位には、方向性①(限定告知の通常売却)が比較的合っています。ただし、いきなり売り出すのではなく、正確な残債と管理状態を先に見える化したうえで、もし下振れたら②へ切り替える──この二段構えが、持ち出しと信用への影響の両方を避ける現実的な道筋です。

判断の前に、まず数字を「確定」させる

このケースで難しいのは、性格の不一致でも、物件の欠陥でもありません。「足りるか足りないか、ぎりぎりで分からない」という一点です。だからこそ、最初にやることは決めることではなく、見えるようにすることでした。

ローン残高証明と管理資料を確認し、売却前に数字を確定させるチェックリストのイメージ

  • それぞれの金融機関で残高証明を取り、正確な残債を確定する
  • 管理会社へ重要事項調査報告書を請求し、修繕積立金・滞納の有無を確かめる
  • 二人で「最低売却ライン(残債+諸費用)」をすり合わせておく

残債が確定し、管理状態が分かり、最低ラインが共有できたとき、3,880万円という数字が「安心していい数字」なのか「あと一歩の数字」なのかが、はっきり見えてきます。

分からないから決められない。その正体は、たいてい「まだ数字が揃っていない」だけです。揃えてしまえば、家のことを毎日考え続けなくていい状態に、少しずつ近づいていきます。

住宅ローン、連帯保証、持分、抵当権抹消、任意売却の条件は契約と返済状況で異なります。二本の契約と残高を分け、各金融機関、必要に応じて弁護士・司法書士・税理士等へ確認してください。


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