不動産の問題は、ある日突然大きくなるものではありません。多くの場合、「まだ困っているわけではない」「今すぐ決める必要はない」と感じている状態から、少しずつ始まります。実際の相談でも、「問題というほどではないけれど、何となく気になっている」という段階でお話をうかがうことが少なくありません。不動産の状況を見ていくと、問題はいくつかの共通したパターンの中で、気づかないうちに形をなしていくことが多いように感じます。
不動産が問題として現れやすい5つの形
相続や空き家についての相談を受けていると、不動産の問題にはある程度共通した流れがあることに気づきます。
もちろん、まったく同じ状況はありません。それでも実務の現場で見ていると、問題が生まれるきっかけには、似た形が繰り返し現れます。
不動産は動かせない資産です。建物があり、土地があり、権利関係があり、管理の責任があります。状況が整理されないまま時間が過ぎると、いくつかの典型的なパターンで負担が表れやすくなります。
ここでは、実務でよく見られる代表的な5つを整理します。
① 空き家になり、管理が止まる
もっとも多いのが、家が空き家になるケースです。
親が施設に入った、別の場所に住み替えた、相続が発生した、こうしたきっかけで家が使われなくなることがあります。
最初のうちは「ときどき様子を見に行く」という形でも、目立った問題は出てきません。しかし人が住まない期間が長くなると、換気や手入れの頻度が落ち、建物の状態が少しずつ変わっていきます。
空き家そのものが問題なのではなく、管理の形が定まっていないことが、じわじわと負担につながっていくのです。
② 相続で共有名義になる
相続によって不動産の名義が複数人の共有になることも、珍しくありません。
兄弟や親族で相続した場合、一つの不動産を複数人で所有する形になります。共有名義そのものが悪いわけではありませんが、売却や活用の場面では共有者全員の合意が必要になります。人数が増えるほど、意思決定に時間がかかりやすくなるのは自然なことです。
最初はスムーズだった関係も、時間が経つにつれて意見の調整が難しくなっていくケースも見られます。
③ 家族の意見がまとまらない
不動産の話は、家族それぞれの気持ちが絡む、デリケートなテーマです。
思い出のある家を残したいという気持ちも、管理の負担を減らしたいという考えも、どちらも自然な感情です。どちらが正しいという話ではありません。
ただ、方向が整理されないまま時間だけが過ぎると、不動産は「誰も決められない問題」として宙に浮き続けることになります。
実際の相談でも、「家族で話はしているが、なかなか結論が出ない」という状態が、気づけば数年続いていたというケースは少なくありません。
④ 維持費だけが続く
不動産は、使っていなくても費用がかかります。
固定資産税や都市計画税、草木の手入れ、小さな修繕。所有しているだけで、一定の費用が毎年発生します。一つひとつの金額は大きくなくても、年単位で積み重なると、じわじわと負担感が増してきます。
「使っていないのに、費用だけが出ていく」という感覚が続くと、不動産が心理的な重荷になっていきます。
⑤ 管理の責任が曖昧になる
もう一つよく見られるのが、誰が管理を担うのかが明確でない状態です。
相続後の不動産が「とりあえずそのまま」という形で持ち続けられると、草木の手入れや建物の点検を誰が行うのかが曖昧になっていきます。責任の所在がはっきりしないと、小さな問題でも対応が後回しになりやすく、気づいたときには手間と費用が膨らんでいた、ということになりかねません。
まずは状況の形を見ていく
ここまで見てきたように、不動産の問題はさまざまな形で現れますが、多くの場合はこうした共通したパターンの中で進んでいきます。
大切なのは、「売るか残すか」をすぐに決めることではありません。まずは、その不動産が今どのような状態にあるのかを落ち着いて把握することです。
空き家なのか、共有名義なのか、管理の形は決まっているのか、そうした状況を一つひとつ整理していくことで、次に考えるべきことも自然と見えてきます。
不動産を「考え続けなくていい状態」へ
不動産の問題は、急いで答えを出すものではありません。
状況を落ち着いて見ていくこと。判断の材料を一つずつ整えていくこと。
そうすることで、不動産は「どうすればいいか分からない問題」ではなくなっていきます。少しずつ、ずっと気にかけ続けなければならない状態から抜け出していくことができます。
そして多くの場合、不動産の問題は時間とともに少しずつ形を変えていきます。特に空き家は、時間が経つほど状況が複雑になりやすい性質があります。
次のコラムでは、空き家がなぜ時間とともに難しくなっていくのかを、具体的に見ていきます。